去年の春の
夜
(
よ
)
、 ――と云ってもまだ風の寒い、月の冴えた夜の九時ごろ、
保吉
(
やすきち
)
は 三人の友だちと、
魚河岸
(
うおがし
)
の往来を歩いていた。