IT書では、パソコンの画面を撮影した「スクリーンショット」が欠かせません。ほとんどのOSには標準でスクリーンショットの撮影機能が用意されていますが、「書籍原稿としての扱いやすさ」という観点で考えると、いくつか不足が出てきます。
ここでは、はじめてIT書を執筆される方に向けて、リブロワークスで日常的に行っているスクリーンショットの撮り方を紹介します。
IT書で使われるスクリーンショットには、主に次の4種類があります。
デスクトップ全体を撮影したものです。デスクトップ自体やタスクバーを説明するとき、複数のウィンドウを1枚の画像に納めたいときなどに使います。
一見すると、すべてフルスクリーンで撮影しても問題なさそうに見えますが、実際の紙面には1つのウィンドウしか載せないことが大半です。そのため組版のときにトリミングする手間が増えないよう、次に説明するウィンドウショットを一番よく使います。
1つのウィンドウだけを撮影したものです。最近のOSではウィンドウの周囲にシャドウが付きますが、紙面のデザインと合わない、組版時のトリミングの手間を減らすといった理由から、たいていの場合はカットします。
メニューを開いた状態のウィンドウを撮影することもよくあります。何かのキー操作をするとメニューが閉じてしまうため、タイマー撮影(指定した秒数後に撮影する機能)を使います。
通常はマウスポインタを入れずに撮りますが、ドラッグ&ドロップ操作を説明する場合などはマウスポインタを入れたほうがわかりやすくなります。こういうときにマウスポインタ入りで撮影する機能が必要です。キー操作でマウスポインタの形が変わる場合は、タイマー撮影を併用します。
以上のことから、IT書のスクリーンショット撮影では、3つの機能が必要であることがわかります。
Windows向けに公開されている「キャプチャーソフト」の多くはこれらの機能を備えています。どれを使ってもいいのですが、ここでは「SnapCrab」というフリーソフトを例に解説します。
ちなみにリブロワークスではWinSnapというシェアウェアを使っています。しかし有料なのと設定画面が英語であることから今回は候補から外しました。XP時代に開発されたWinShotというフリーウェアも根強い人気がありますが、Windows 10のウィンドウショットを撮ると端が切れてしまうため、設定画面で撮影範囲を上左右7px広げる必要があり、png保存の設定も少しわかりにくいため、あまりおすすめはできません。
なお多くのキャプチャーソフトに用意されている、撮影範囲をドラッグして指定する「領域キャプチャ」の機能は、原則使いません。ショットごとに切り抜く範囲がずれてしまい、誌面で揃えるのが大変になるからです。ウィンドウ単位で撮影し、トリミングはDTPソフトに任せたほうが、きれいな誌面に仕上がります。
SnapCrabを使うために、まずはブラウザから公式サイトにアクセスしましょう。
「SnapCrab for Windows」をクリックし、画面の指示に従ってインストールします。
SnapCrabを起動後、タスクバーのをクリックしてSnapCrabのアイコンを右クリックします。設定メニューが表示されたら「詳細設定」→「保存先」→「参照」をクリックし、スクリーンショットの保存先を指定します。
ホットキーとは、画面撮影に用いるショートカットキーです。標準では[Ctrl]キーや[Alt]キー、[Prt Sc]キーなどが設定されていますが、設定メニューで「詳細設定」→「ホットキー」をクリックすると別のキーに変えられます。
多数の項目が用意されていますが、まずは「ウィンドウをキャプチャ」と「デスクトップ全体をキャプチャ」だけ設定しておきましょう。
執筆をはじめる前にウィンドウのシャドウを消します。設定メニューで「ウィンドウのシャドウを含める」のチェックを外しましょう。
初期設定では[Prt Sc]キーを押すとフルスクリーンショット、[Alt]キー+[Prt Sc]キーを押すとウィンドウショットが撮影されます。自分で設定したホットキーを使っても構いません。
設定メニューで「マウスカーソルを含める」にチェックを付けると、スクリーンショットにマウスポインタが表示されます。ドラッグ&ドロップ操作のように、操作の説明上でマウスポインタが必要な場合に利用しましょう。特にマウスポインタが必要なければ、チェックは外したままで構いません。
タイマー撮影を行う場合はホットキーは使用せず、設定メニューを表示してから撮影範囲を指定します。たとえばフルスクリーンショットを撮りたいときは、設定メニューで「デスクトップ全体をキャプチャ」を選択します。
そのあとマウスポインタを動かさずにいると、カウントダウン後にスクリーンショットが撮影されます。
最後に簡単ですが、Maのスクリーンショット撮影についても紹介します。
MacにもWindowsと同じように、標準で画像撮影用のショートカットキーが用意されています。
ショートカットキー | 機能 |
---|---|
[command]+[shift]+[3]キー | フルスクリーンショット |
[command]+[shift]+[4]キーを押したあと、[Space]キーを押す | ウィンドウショット |
[command]+[shift]+[4]キーを押したあと、画面をドラッグする | 領域キャプチャ(原則使わない) |
ほとんどの場合はフルスクリーンショットとウィンドウショットで対応できますが、標準では画像にマウスポインタを含めたり、タイマー撮影を行ったりすることはできません。InDesignをはじめとしたAdobe系の解説書では、画像の配置や拡大/縮小などでドラッグ&ドロップ操作を多用するため、これでは不便です。そこでリブロワークスでは、App Storeから無料で入手できるMonosnapというアプリを使っています。
Monosnapでは[command]+[option]+[5]キーを押したあと、[command]キーを押しながらウィンドウをクリックするとタイマーが始動し、マウスポインタが含まれた状態で撮影されます。タイマーの時間を指定する、マウスポインタが常に含まれた状態で画像を撮るといった細かな設定はできませんが、それでも十分役立ちます。