当社は主にIT系の書籍を扱う編集プロダクションです。様々なIT用語を取り扱うのですが、1文字違うだけで意味が変わったり、字面がものすごく似ていたりと、紛らわしい用語が大量にあることをご存じでしょうか。
この世のあらゆる試験の性として、似ている言葉はひっかけ問題として出題されやすいものです。基本情報技術者試験などのIT系の資格試験でも例に漏れず、似た言葉が選択肢として並んで出題されることがあります。したがって試験にあたっては出題範囲の用語の意味を確実に覚えなければならず、苦戦する人も多いのではないかと思います。
そこで今回は、自分が今まで「紛らわしいなあ」と思った用語の意味を改めて調べてみようと思います。
「aaS」の部分を先に説明すると、「as a Servie」の略です。先頭につく言葉によって意味は変わってきますが、一貫して「インターネット上のサービス(クラウド)」として提供される形態を示しています。
代表的かつ、ITに携わっている多くの方が知っているであろうものは、以下の3種類です。
Iaas(Infrastrucure as a Service) | 仮想サーバをはじめとする機器やネットワークなどのインフラを、インターネット上のサービスとして提供すること |
PaaS(Platform as a Service) | ハードウェアやOSなどのプラットフォームを、インターネット上のサービスとして提供すること |
SaaS(Software as a Service) | ソフトウェアをインターネット上のサービスとして提供すること |
自分もこれらは把握していたのですが、先日ネットサーフィンをしていたところ、「●aaS」シリーズはこれだけではないことを知りました。調べてみたのでいくつか例を挙げようと思います。
AaaS(Analytics as a Service) | (大規模な)データ分析をインターネット上のサービスとして提供すること |
BaaS(Backend as a Service) | ユーザー認証、データ管理などのバックエンドの処理をインターネット上のサービスとして提供すること |
GaaS(Government as a Service) | 行政などのサービスをインターネット上のサービスとして提供すること |
NaaS(Network as a Service) | ネットワーク環境をインターネット上のサービスとして提供すること |
MaaS(Mobility as a Service) | 自家用車以外のバスや電車などの交通機関を1つのサービスとして捉えるもの |
などなど、サイトによって挙げられている数が異なるため、正確な数は把握できなかったのですが、このようにI・P・S以外にも様々な「●aaS」があるそうです。
個人的にはクラウド化がますます進む今日、やろうと思えばアルファベット26文字すべてで「●aaS」にできるのではないかと思います。また、主流だったI・P・S以外の「●aaS」がトレンドとしてやってくる可能性も十分にあるのではないかな、と思いました。
「シャープ」と聞くとどのような記号を思い浮かべますか?おそらく、漢字でいうと「井」に似た、あの記号を思い浮かべるのではないでしょうか。
しかしその記号、実はシャープではないかもしれません。
皆さんがもしシャープとして「#」を思い浮かべたのであれば、残念ながらそれは間違いです。なぜなら、「#」は「ナンバーサイン」というまったく別の記号だからです。正解は「♯」です。
見た目は非常に似ている両者ですが、その意味は大きく異なります。
「♯」は音楽記号の1つで、呼び方は「シャープ」です。見た目の特徴は縦線が垂直で、横線が右肩上がりになっている点です。
いっぽう、「#」のほうは「ナンバーサイン」、「番号記号」、「ハッシュ」、「井桁」などと呼ばれ、番号を示す文字の前に置く記号です。見た目の特徴はシャープとは異なり、縦線が斜めになっている代わりに横線は水平です。TwitterやInstagramの「ハッシュタグ」で使われているのはこちらのほうです。また、キーボードで「3」と同じキーにいるのもこちらのほうです。
では何故私たちはこれらを混同してしまうのでしょうか?
その大きな理由が、電話のダイヤル及び、自動アナウンスだといわれています。
「シャープを押してください」という電話の自動応答アナウンスは、誰しも1回は聞いたことがあるのではないでしょうか。ここで、もし近くに固定電話やスマートフォンがあるのであれば、是非ダイヤル部分(キーパッド)を見てみてください。右下にあるその記号、本当にシャープでしょうか。
そうです。電話で使われているのはシャープではなく、ナンバーサインなのです。
一説によると、この間違った呼び方が日本で定着してしまったがために、シャープとナンバーサインを混同してしまう日本人が多いのではないか、といわれています。
自分も、つい先日まで両者の違いをよく把握せずに生活していただけに、この事実を知ったときは大変驚きました。
シャープやナンバーサインを手書きすることや、両者が同時に登場する場面はあまりないかもしれませんが、今後は確実に使い分けるようにしていきたいと思います。
プログラミング言語に「C#」というものがありますが、読み方は「シーシャープ」です。これまでの文章を踏まえると、「あれ、シーナンバーサインやシーハッシュにならないの?」と思われるかもしれませんが、「シーシャープ」が公式の読み方です。
ECMA(国際標準化団体)のサイトからダウンロードできるC#の仕様書には、このように書かれています。
The name C# is pronounced “C Sharp”. The name C# is written as the LATIN CAPITAL LETTER C (U+0043) followed by the NUMBER SIGN # (U+0023).
訳:C#は「シーシャープ」と発音します。表記は、大文字のCにナンバーサイン(#)を続けて書いたものです。
出典:https://www.ecma-international.org/publications-and-standards/standards/ecma-334/
ということで、C#では例外的にナンバーサインをシャープと発音するようです。
サイトにログインしようとしたときに、「サインイン」と「サインアップ」というボタンが並んで表示されていて、「あれ、どっちだっけ」と困惑した経験はないでしょうか?
自分は何度も「サインイン」と「サインアップ」を混同することがあるため、ここでその意味をハッキリさせようと思います。
用語 | 意味 | 類語 |
---|---|---|
サインイン | 既に会員登録済みのユーザーが、ユーザー名やパスワードなどを入力して本人認証すること | ログイン、ログオン、サインオン |
サインアップ | サービスを利用するために新規にアカウントを作ること | – |
バリエーションがありすぎて混乱しますが、サインイン、サインオン、ログイン、ログオンはすべて同じ意味です。一般的にはサインインとログインがよく使われているそうです。
英語的な意味を考えてみると、サインイン(sign in)は「署名する」などといった意味で、サインアップ(sign up)は「登録をする」「契約する」といった意味です。カタカナの字面だけ見ると紛らわしいですが、本来の意味を考えるとわかりやすいかもしれませんね。
また、ログイン、ログオンなどのログ(log)は「丸太」の意味です。船の航行速度を測る機械がなかった時代、丸太を先に結んで、結び目を一定間隔でつけたロープを海に投げ入れ、一定時間あたりにどれくらい結び目が海に出たかを数えて速度を測ったそうです。このことから、航行速度を測ることを「log in(丸太を海に投げ込む)」というようになり、さらに転じて、航海日誌をlogbookと呼ぶようになりました。
ここから、記録の意味でlogが使われるようになり、ログインやログオンの「ログ」に繋がっていったといわれています。
こうして由来まで考えると、ただ用語と意味を並べて覚えようとするよりも深く理解でき、記憶にも定着しやすそうですね。
数学にもlogが登場しますが、こちらは対数の意味であるlogarithmの略なので、記録の意味のlogとは別物です。
航海や航空で使われる速さの単位にノット(knot)というものがありますが、このknotは「結び目」の意味です。先ほど紹介した、結び目をつけたロープを海に投げ入れて航行速度を測ったことが由来となっているそうです。
ここで挙げた例はほんの一部であり、ITの世界にはまだまだ似ているややこしい用語があります。またITの世界に限らず、あらゆる分野でそういった用語があるかと思います。それらを改めて調べてみたり、言葉の由来などを考えてみると、新たな発見があるかもしれません。