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    コードネーム(code name)とは、ある人物やモノなどを指すために、正式名とは別に付けられた名前です。コードは暗号という意味もあり、暗号名とも呼ばれます。コードネームにピンとこない方もいるかもしれませんが、このコードネームは見聞きしたことがあるのではないでしょうか。

    『007』

    映画のタイトルでもありますが、かの有名なイギリスの諜報機関「MI6」に所属する、ジェームズ・ボンドのコードネームです。昨年、6代目ジェームズ・ボンドを演じるダニエル・クレイグの最後の作品が公開され、話題になりました。

    日本国内に限定すれば、昨今はTVアニメ「SPY×FAMILY」でスパイ活動を行っている主人公、ロイド・フォージャーのコードネーム『黄昏』のほうが有名かもしれません。

    IT界隈のコードネームは

    お話の世界だと、正体を隠しておきたい人物やモノに対して、コードネームがよく使われます。スパイ活動をしている人は、本名なんて出せないですよね。

    しかし、IT界隈ではコードネームが正式名のように扱われる場合があります。

    macOS

    先日、 WWDC22(Appleの開発者向けのイベント)にて、新しいmacOSのバージョン『Ventura』が発表されました。この『Ventura』は、macOSのバージョン13.0に付けられたコードネームなのです。

    歴代のMac向けのOSは、OS名とバージョンにあわせて、コードネームも公開されます。初期はネコ科の動物名でしたが、途中からAppleの本社があるカリフォルニア州にある地名などが使われるようになりました。

    OS名とバージョンコードネーム由来
    Mac OS X 10.0Cheetah(チーター)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.1Puma(ピューマ)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.2Jaguar(ジャガー)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.3Panther(パンサー)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.4Tiger(タイガー)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.5Leopard(レパード)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.6Snow Leopard(スノー レパード)ネコ科の動物
    Mac OS X 10.7Lion(ライオン)ネコ科の動物
    OS X 10.8Mountain Lion(マウンテン ライオン)ネコ科の動物
    OS X 10.9Mavericks(マーベリックス)カリフォルニア州にある海岸
    OS X 10.10Yosemite(ヨセミテ)カリフォルニア州にある渓谷
    OS X 10.11El Capitan(エル キャピタン)カリフォルニア州ヨセミテ国立公園にある花崗岩の一枚岩
    macOS 10.12Sierra(シエラ)カリフォルニア州にある山脈名
    macOS 10.13High Sierra(ハイ シエラ)カリフォルニア州のシエラ国有林の地域名
    macOS 10.14Mojave(モハベ)カリフォルニア州の砂漠の名前
    macOS 10.15Catalina(カタリナ)カリフォルニア州南部にあるサンタ・カタリナ島
    macOS 11.0Big Sur(ビッグサー)カリフォルニア州セントラルコーストにある沿岸地域名
    macOS 12.0Monterey(モントレーカリフォルニア州にある町
    macOS 13.0Ventura(ヴェンチュラ)カリフォルニア州にある町
    macOSのコードネーム一覧

    Macにはデスクトップに設定できる画像があらかじめ数枚用意されていますが、その中にコードネームの由来となった場所や動物の画像が含まれているバージョンがあります。Mac OS X 10.7『Lion』は、ライオンの顔がドアップの画像があり、迫力のある一枚でした(※1)。『Ventura』はどんなデスクトップ画像が入っているのか、ちょっとだけ楽しみです。

    Android

    スマートフォン向けのOSであるAndroidもコードネームが付いており、すべてお菓子由来の名前です。

    バージョンコードネーム
    1.0なし
    1.1なし
    1.5Cupcake(カップケーキ)
    1.6Donut(ドーナッツ)
    2.0 – 2.1Eclair(エクレア)
    2.2Froyo(フローズンヨーグルトの英語表記frozen yogurtの略)
    2.3Gingerbread(ジンジャーブレッド)
    3.0 – 3.2Honeycomb(ハニーコム)
    4.0Ice Cream Sandwich(アイスクリームサインドイッチ)
    4.1 – 4.3Jelly Bean(ジェリービーン)
    4.4KitKat(キットカット)
    5.0 – 5.1Lollipop(ロリポップ)
    6.0Marshmallow(マシュマロ)
    7.0 – 7.1Nougat(ヌガー)
    8.0 – 8.1Oreo(オレオ)
    9Pie(パイ)
    10非公開(Q???)
    11非公開(R???)
    12非公開(S???)
    12L非公開(T???)
    Androidのコードネーム一覧

    以前、スマホアプリの開発に携わっていたときは、

    「ロリポップだけ不具合が起きる」
    「キットカットだと不具合はなかったよ?」

    なんて会話をしたことがあります。

    日本では馴染みのないお菓子もあるので、気になった方は調べてみてください。画像に胸焼けすること間違いなしです! 途中からコードネームが正式に公表されなくなってしまいましたが、開発チーム内では今もコードネームが付けられているようです。

    Vue.js

    最後に、JavaScriptのフレームワークの1つ、Vue.jsのコードネームをご紹介しましょう。

    バージョンコードネーム
    v0.9.0Animatrix(アニマトリックス)
    v0.10.0Blade Runner(ブレードランナー)
    v0.11.0Cowboy Bebop(カウボーイビバップ)
    v0.12.0Dragon Ball(ドラゴンボール)
    v1.0Evangelion(エヴァンゲリオン)
    v2.0Ghost in the Shell(ゴースト イン ザ シェル)
    v2.1Hunter X Hunter(ハンター×ハンター)
    v2.2Initial D(イニシャル D)
    v2.3JoJo’s Bizarre Adventure(ジョジョの奇妙な冒険)
    v2.4Kill la Kill(キルラキル)
    v2.5Level E(レベルE)
    v2.6Macross(マクロス)
    v3.0One Piece(ワンピース)
    v3.1Pluto(プルートゥ)
    v3.2The Quintessential Quintuplets(五等分の花嫁)
    Vue.jsのコードネーム一覧

    お気付きでしょうか? v0.10.0の『Blade Runner』以外は、すべてマンガもしくはアニメの名前なのです。しかも、ほぼ日本の作品です! GitHubで公開されているリリースノートに明示されています。

    ▼Vue.js 3.2のリリースノート
    https://github.com/vuejs/core/releases/tag/v3.2.0
    (ほかのバージョンも遡れば確認できます)

    ちなみに、開発者のエヴァン・ヨー氏は、マンガやアニメ、映画などが好きだと公言しています。

    おわり

    IT界隈でのコードネームは、ある種のニックネームのようにも使われていて、個人的に面白く感じています。また、コードネームの付け方にそれぞれ個性があり、新しいバージョンがでるとその意味や由来がとても気になります。
    Vue.jsの次のバージョンのコードネームは「R」、さらにその次が「S」からはじまるはずです。もしかしたら……『SPY×FAMILY』がコードネームになるかもしれませんね! スパイ活動をしている人やITに限らず、なんらかの開発を行っている方は、コードネームを付けてみてはどうでしょうか。

    ※1
    Appleの公式サイトからは確認できなかったのですが、ニュースサイトにデスクトップのスクリーンショットが残っていました。興味がある方はコチラからどうぞ。