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    計画性のない私がミニマリストになろうとすると、最悪の場合死ぬ

    2021年の3月11日、東日本大震災の発生から10年が経過した。

    それでも大地震は記憶の中だけの出来事ではなく、今年に入ってからだけでも、2月13日に福島県沖を震源とする最大震度6強の地震が発生し、さらに3月20日には宮城県沖を震源とする最大震度5強の地震が発生している。

    災害への備えは常に怠るべきではないが、ここ最近は特に防災について考えるきっかけとなる出来事が多く、地震に限らず被災時の備えをあらためて見直した人は少なくないのではないだろうか。

    筆者もその一人で、2月13日に地震があってから、部屋を見回すと2日分くらいの食料しかなく、3日目からは救助が来るまでハリボーのグミで食いつながなければならないことに気づいて愕然とし、災害への備えを考える必要を感じた。

    被災時の備えという観点で言うと、筆者の家の問題点は生存に必要な備えがわずかしかないうえ、そのわずかな備えも、他の生存に不要なものに埋もれてすぐに取り出せる状態にないことだ。

    たとえば、自治体が発行している防災冊子を家に置いてはいるが、本や雑誌が積み上がって形成されたサグラダ・ファミリアの中に埋没してしまっている。ガスや電気が止まった時のためにガスコンロを用意してはいるが、食器棚の奥に押しやられていて、その手前にある食器などが地震で割れてしまっていたらおそらく取り出せない。

    それゆえ、これまでメディアなどで紹介される「ミニマリストの家」的な、無駄がなくモノが少ない住環境に憧れることもしばしばだったのだが、災害時の備えを見直すなかで、表層的な部分だけでミニマリストに憧れることは危険ではないかと思うようになった。

    私がミニマリストになろうとすると、最悪の場合死ぬ。

    収納する場所がないにも関わらず雑誌を買い込んでしまうような計画性のない人間が下手にミニマリストを目指すと、おそらく災害時に必要な余剰まで「断捨離」してしまうからだ。

    自分の持ち物を「冗長化」する

    話は変わるが、コンピュータのデータベースシステムには、「冗長化」という考え方がある(申し遅れましたが弊社リブロワークスはIT関連書籍を中心とした書籍を手掛ける編集プロダクションです)。

    「冗長」というと、普通は無駄があって長たらしいさまを表す言葉だが、データベースシステムにおける「冗長化」とは、データベースが故障した際に備えて、別のデータベースに同じデータを保存しておくことを指す。

    データベースを「冗長化」すると、1つのデータベースでも2倍のデータ容量が必要になり、コスト面では負担が増えるが、万が一の故障に備えて、紛失しては困るデータを保存するデータベースの構成には「冗長化」の考え方を採用することが多い。

    表層的な部分だけでミニマリストに憧れて家にあるものを整理すると、「必要最低限以外のものは家から無くしてしまおう」と短絡的な「断捨離」発想に至りがちだ。

    しかし、電気や水道などのインフラを問題なく利用できる平時に考える「必要最低限」と、それらが使えなくなった緊急時の「必要最低限」の間には大きな隔たりがあるだろう。

    むしろ、自分の持ち物を「冗長化」しておいて、平時にはそれほど必要でない余剰を持っておくことが緊急の場合には役に立つ場合もある。

    緊急時に何が「必要最低限」となるかは平時にはなかなか想像しにくいが、先ほども紹介した、東京都防災ホームページから閲覧できる『東京防災』などが参考になる。

    https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1002147/

    『東京防災』「02 今やろう 防災アクション」では、日頃利用している食料品や生活必需品を少し多めに購入しておく「日常備蓄」という考え方が紹介されている。これは、「必要最低限」のラインを高めに設定して、持ち物を「冗長化」しておく考え方とも言えるだろう。

    「最小限備えたいアイテム」もリストにまとめられているが、この中には平時の「必要最低限」には含まれなさそうなもの、油断すれば「断捨離」の対象にしてしまいそうなものも多く含まれている。

    生活用品大型ポリ袋・ゴミ袋 各 30枚
    ポリ袋
    救急箱
    ラップ 1本
    ティッシュペーパー 1パック(5個)
    トイレットペーパー 12 ロール
    除菌ウェットティッシュ 1箱・約100枚
    使い捨てコンタクトレンズ 1ヵ月分
    使い捨てカイロ 10 個
    点火棒 1個
    携帯電話の予備バッテリー 3個 (携帯電話の台数分)
    ラテックス手袋 1箱・ 約100 枚
    『東京防災』に掲載された「備蓄ユニットリスト」からの抜粋

    もし私が「できるだけ少ないモノで暮らす」ことを考えて家にあるものをすべて整理したら、おそらくこのリストにある「ラテックス手袋100枚」はかなり初期の段階で捨てているだろう。というよりそもそも現時点でラテックス手袋は1枚も家にない。

    そのあたりを踏まえたうえで災害時の備えまで万全を期しているミニマリストは、おそらくミニマリスト界でも上位のミニマリストなのだろう。私はその次元までミニマリスト・ヒエラルキーを登っていく自信がない。

    すごくいいことを言っている風の言い訳

    「できるだけ少ないモノで暮らす」ミニマリストを目指すのは素晴らしいことだが、緊急時に必要になるものまで「今は必要ないから」と手放してしまっては、生存の可能性までミニマムにしてしまう。

    だからと言って片付かない部屋のすべてを正当化しきれるわけではない。

    それでも、私はミニマリストを目指してただの「部屋が殺風景なうえに災害に弱い人」に堕してしまうよりは、最低限の防災対策はしたうえでサグラダ・ファミリアのスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す、意識の低いガウディでありたい。

    それでは、ラテックス手袋を買いに行くのでまた次回。